落ちる提案文を並べて読むと、書いてあることがほぼ同じです。自己紹介から始まり、「未経験ですが」と予防線を張り、使える技術を列挙し、相手のサイトを見た形跡がなく、最後に「ご検討ください」で終わる。当校の講師が受講生の提案文を添削するときも、公募の応募文と直接提案の1通目とで、落ち方に違いはありません。
逆に言えば、この5つを外すだけで、文面は「読まれない側」から抜けられます。この記事では、落ち続ける提案文の共通点5つ、発注者が提案文をどう読んでいるか、通る提案文の構成7要素、同じ提案先に対する「落ちる版」と「直した版」の全文を順に書きます。
提案の件数・受注率の目安・単価相場は副業からフリーランスへの解説記事にあります。提案文と一緒に届けるポートフォリオ側の直し方はポートフォリオを作っても案件が来ない理由の記事に書きました。本記事は「提案文というテキストそのもの」に絞ります。
5つとも「自分のことを書いている」に集約されます。発注者は自分の店や会社の話を読みたいのに、届く文面は書き手の話ばかりです。
| 共通点 | 書いていること | 発注者の受け取り方 |
|---|---|---|
| 1. 自己紹介から始まる | 「〇〇と申します。HTML/CSSを学習し、Web制作を始めました」 | 2行読んで自分の話が出てこないので、そこで閉じる |
| 2. 予防線を張る | 「未経験ですが」「勉強のため格安で」「至らない点もあるかと」 | 責任を引き受ける気がない人、と読まれる。安さは安心材料にならない |
| 3. 技術を列挙する | 「HTML/CSS/JavaScript/jQuery/WordPress対応可能です」 | 店舗オーナーには読めない。自分の用途に効くのかが分からない |
| 4. 相手の現状に触れていない | 相手のサイトや店のことが1行も出てこない | 誰にでも同じ文を送っている、と分かる。返信の優先度が最下位になる |
| 5. 次の一歩がない | 「ご検討のほどよろしくお願いいたします」で終わる | 何を返せばいいのか分からない。返信の手間が大きい文は後回しにされ、忘れられる |
添削で一番多いのは1と4の組み合わせです。冒頭が自己紹介で、相手の話がどこにもない。本人は丁寧に書いたつもりで、文面も整っています。それでも返信が来ないのは、文章力の問題ではなく、書く対象を間違えているからです。当校の講師が添削で最初に確認するのは、「この文のどこに相手の店の名前と現状が出てくるか」で、出てこなければ書き直しです。
5番目は見落とされがちです。「ご検討ください」は、相手に「検討」という大きな仕事を渡しています。何を検討すればいいのか、返事はどう書けばいいのか。それを考える手間がある文面は、忙しい相手ほど後回しにします。後回しにされた提案文は、ほぼ戻ってきません。
発注者が最初に読むのは、件名と冒頭の2行だけです。そこに自分の店の話があれば続きを読み、なければ閉じます。全文を読んでもらえるかどうかは、この2行で決まります。
相手が誰かはポートフォリオ記事の「発注者はどこを見るか」に書いたとおり、店舗のオーナーや小さな会社の担当者です。提案文の読まれ方に絞ると、相手は提案文を読むために時間を空けているわけではありません。営業時間の合間にスマートフォンで開いて、数十秒で「自分に関係があるか」を判断します。
当校の講師陣が発注側に回ったときも、読み方は同じです。冒頭2行に自分たちの話がなければ、その先の経歴や技術は読みません。読んだうえで返信するかどうかを分けるのは、「返信に必要な手間が小さいか」です。「〇〇という理解で合っていますか」と聞かれれば「はい」で返せますが、「ご検討ください」には返しようがありません。
提案を出しても結果が出ないとき、どこを直すべきかは「返信が来ているか」で切り分けられます。2026年9月時点で、当校の受講生の提案を見てきた範囲での目安は、提案10件に対して返信2〜3件です。
受注率の標準値や、落ち続けたときの心の持ち方は「やめとけ」記事の3つの山に書いてあるので、ここでは繰り返しません。返信率は受注率より先に動く指標なので、文面の改善効果を早く確かめられます。
通る提案文は、全体で400字前後(300〜450字)、冒頭2行が相手の話で始まり、末尾が「はい」で返せる質問で終わります。要素は7つで、順番も固定です。
| 順 | 要素 | 書くこと | 分量 |
|---|---|---|---|
| 1 | 件名 | 相手の店名と用件。「〇〇様のサイトのスマホ表示について」 | 1行 |
| 2 | 書き出し | 相手のサイトを見た事実と、見て気づいたこと。自己紹介はここに入れない | 2行 |
| 3 | 課題の指摘 | 気づいたことが相手の商売にどう影響しているか。1〜2つに絞り、打ち手と1対1で対応させる | 2〜3行 |
| 4 | 打ち手 | その課題に対して何を作る(直す)か。技術名ではなく、相手に見える変化で書く | 2〜3行 |
| 5 | 対応範囲と納期 | どこまでやるか、いつまでにできるか。できないことがあれば、ここで正直に | 2行 |
| 6 | 自己紹介と料金の触れ方 | 名前と、同じ用途の制作例1本(URL)。料金は「詳細をうかがってからお見積り」でよい | 2行 |
| 7 | 次の一歩 | 「はい」で返せる質問1つ。「一度15分ほどお話をうかがえますか」 | 1行 |
自己紹介が6番目にあるのは、順番を間違えないためです。自己紹介は必要ですが、相手の話の後でないと読まれません。制作例のURLも1本で足ります。3本並べるより、相手と同じ業種の1本のほうが「自分の用途に頼めるか」に答えています。
料金を書くべきかはよく聞かれますが、直接提案の1通目に金額は不要です。相手はまだ制作を検討していない段階なので、金額を先に出すと「高い・安い」の判断だけが先行します。うかがってから見積もる、で足ります。逆に、公募の応募文で予算が明示されている場合は、その予算内で何をどこまでやるかを5番目に書きます。
提案先は、地元の工務店とします。サイトはあるがスマートフォンで表示が崩れ、施工事例のページが3年前の案件で止まっている、という状況です。当校の添削で実際に多い形を、編集部が再構成しました。
件名: Web制作のご提案
はじめまして。〇〇と申します。現在Web制作の学習をしており、HTML/CSS、JavaScript、WordPressでのサイト制作に対応可能です。まだ実績は多くありませんが、勉強のため相場より安い料金でお受けしております。ホームページの新規制作やリニューアルなど、ご要望がございましたら何でもお申し付けください。ポートフォリオはこちらです(URL)。至らない点もあるかと思いますが、精一杯対応いたします。ご検討のほどよろしくお願いいたします。
件名に相手の名前がなく、冒頭は自己紹介、2文目で技術を列挙し、3文目で予防線と安さ、4文目で「何でも」、末尾は「ご検討」。工務店の話がどこにもありません。この文面は、送る相手を変えてもそのまま使えてしまいます。それが、誰にでも送っていると読まれる理由です。
件名: 〇〇工務店様のサイトのスマホ表示について
〇〇工務店様のサイトを、スマートフォンで拝見しました。施工事例のページで写真が画面からはみ出し、横にスクロールしないと全体が見えない状態になっています。
住宅の相談を検討している方の多くはスマートフォンで施工事例を見て問い合わせるかどうかを決めるので、ここで写真が見づらいと、問い合わせの手前で離脱している可能性があります。また、施工事例が3年前から更新されていないため、最近の実績が伝わりにくくなっています。
ご提案したいのは2点です。1つは、既存のページをスマートフォンでも崩れない表示に直すこと。もう1つは、施工事例をご担当者様が自分で追加できる形にすることです。
スマホ表示の修正は、2週間ほどで対応できます。事例を自分で追加できる仕組みは、現在のサイトの作りによって方法が変わるため、一度確認させてください。
Web制作を行っている〇〇と申します。同じ建築業の制作例を1本お送りします(URL)。料金は、詳細をうかがってからお見積りします。
一度15分ほど、お電話かオンラインで現状をうかがえますか。
文字数は落ちる版が約220字、直した版が約450字(いずれも件名を除く)です。長くなったのは相手の話が増えたからで、書き手の話はむしろ減っています。添削で受講生が一番驚くのは、この「自分のことを減らすと読まれる」という点です。講師側にも、相手が時間をかけて書いた自己紹介を「ここは全部消しましょう」と伝える心苦しさはあります。それでも消すのは、残した文面のほうが返信につながるのを見てきたからです。
共通点2と3に当たる表現を、言い換えとセットで置いておきます。丁寧さのつもりで入れている言葉が、発注者には別の意味に読まれます。
| 書きがちな表現 | 発注者の読み方 | 言い換え |
|---|---|---|
| 未経験ですが / 駆け出しですが | 失敗しても許してほしい、と言っている | 書かない。制作例1本で水準を示す |
| 勉強のため格安で | 練習台にされる。安さは品質の保証にならない | 「詳細をうかがってからお見積りします」 |
| 何でもお申し付けください | 何が得意か分からない。うちの業種は分かっていない | 「〇〇の修正と、△△の追加をご提案します」と2点に絞る |
| HTML/CSS/JavaScript対応可能 | 読めない。自分に関係があるか判断できない | 「スマホで崩れない表示に直せます」など、見える変化で |
| 至らない点もあるかと思いますが | 納品物に不備がある前提で読む | 書かない。できないことは対応範囲の欄に書く |
| ご検討のほどよろしくお願いいたします | 何を返せばいいか分からず、後回し | 「一度15分ほどお話をうかがえますか」 |
| お忙しいところ恐縮ですが(冒頭) | 冒頭の貴重な1行を消費している | 削って、相手のサイトを見た事実から始める |
「できないことを正直に書く」と「予防線を張る」は別物です。前者は「事例追加の仕組みは、現在の作りを確認してから」のように、対応範囲の話として書きます。後者は「至らない点もあるかと」のように、品質全体に保険をかける書き方です。発注者が不安になるのは後者だけです。
直接提案の送り先は、相手のサイトの問い合わせフォームか、記載されているメールアドレスです。SNSのメッセージは、相手がその媒体を仕事で使っている場合以外は避けます。店舗なら、混む時間帯を避けて封書で持参する方法もあります。ただし飛び込みは相手の負担になりやすいので、フォームかメールを先に使ってください。
返信がない場合、1〜2週間空けて1回だけ再送します。再送の文面は、前回の要点を2行で再掲し、「もし優先度が低ければ、その旨だけお知らせいただければ大丈夫です」と添えます。断りやすくしておくと、断りの返信が来ることがあり、それも返信率に入ります。2回目の再送は不要です。その相手には時期を変えて、別の切り口で出し直すほうが返信は来やすい、というのが当校で見てきた範囲での見立てです。
返信が来たら、次のやり取りは質問の形を変えます。「どんなサイトにしたいですか」のような広い質問ではなく、「施工事例は月に何件くらい増えますか」のように、相手が数字か「はい・いいえ」で答えられる質問にします。ヒアリングで相手に考えさせない、というのは提案文の次の一歩と同じ考え方です。
会社員の方の副業規定の確認は、何ヶ月で案件が取れるかの記事に書いたとおり提案前に済ませておいてください。確認項目は「やめとけ」記事のよくある質問にあります。
「なぜこの構成にしたのか」を本人が説明できるかを講師が最初に確かめる、というAddedPallasの添削方針は実務支援の記事に書きました。本記事で足すのは、その「なぜ」が提案文のどこに入るかです。説明できる作品は、そのまま3番目(課題の指摘)と4番目(打ち手)に落とせます。説明できない作品は書くことがなく、技術名の列挙に戻ります。提案文が書けないときは、文章力ではなく、作品の意図が固まっていないことがほとんどです。
受講生の声を引くと、美容師のM.Oさん(25歳)は「課題では評価基準を細かく見てもらえるので、ただ作れるだけでなく、実際にクライアントを相手に仕事ができるレベルまで引き上げてもらえた」と書いています。評価基準を細かく見る、というのは「なぜ」を毎回聞かれる、ということです。
最初の実務案件は、テスト案件とCTO面接を通過した方に業務委託制度で当校の案件を担当してもらいます。お客様とのやり取りを、詰まったときは講師がサポートに入れる体制で経験できるので、提案文の先にあるヒアリングと納品を、最初の1件で一人で抱えずに済みます。この制度は保証ではありません。制度の条件と中身は実務支援の記事に書いています。
この記事の要点は4つです。
自分の提案文がどのパターンに当たるか判断がつかない方は、無料カウンセリングで実際の文面を見せてください。冒頭2行と末尾の1行だけで、直す場所はその場で分かります。
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